博多駅前道路陥没の原因とされる、地下鉄七隈線の延伸工事。詳しい原因はまだ調査中ですが、その工事で使われていたのは、NATM(ナトム)工法とTN-Monitor。それらが、今回の道路陥没事故を引き起こしたのでしょうか。
いったいどのような工法でどのような工事が行われていたのか、チェックしてみます。
博多駅前の道路陥没の影響
博多駅前通り陥没崩落の瞬間の動画
8日午前5時すぎ、福岡市博多区のJR博多駅前5車線の市道で道路が陥没しているとの通報が相次ぎ、現在は、幅およそ27メートル、長さおよそ30メールにわたって大規模に陥没しています。陥没が起きた周辺のビルには避難勧告が出て、警察が周辺の立ち入りを禁止しています。
被害者は、この陥没の影響で停電した現場近くのビルの中にいた70代の女性が階段を踏み外して足に軽いけがをしただけですんでいます。これだけの陥没で、これくらいの被害ですんでいることが奇跡のようですね。
他の影響は、
現場周辺や福岡空港の国際線ターミナルなどで一時最大で800戸が停電
JR博多駅の新幹線の改札口やホームと一部の商業施設などで停電
周辺の一部でガスの供給を停止
NTTの固定電話とインターネットや水道の供給に一部で影響
銀行のオンラインシステムにも影響が出ていて、福岡銀行では福岡県内のすべての店舗で窓口での入金と出金や振り込みができなくなり、一部のATMが使えなくなった
など、さまざまな影響が出ていました。
博多駅前の道路陥没直前の異変
陥没の起きた博多駅前の道路の下では、市営地下鉄七隈線の延伸のため、地下に縦およそ5メートル横およそ9メートルの穴が掘られていて、8日日当日は、掘った穴を大きくする工事が行われていました。
午前4時25分ごろ:トンネル上部の表面から土砂などが落下し始め、コンクリートで固めながら作業を進められていた。
午前5時ごろ:トンネルの上部から水が流れ出てくるのが確認され、作業員を避難させた。
午前5時10分ごろ:に工事現場周辺の道路を全面通行止めにしました。
午前5時15分ごろ:その直後の5分後に、道路が陥没しはじめた
とのことで、危機一髪でした。
陥没した箇所は、トンネル内部をコンクリートやボルトで補強する工法と申請されていたことから、国土交通省は、事故当日の夜から立ち入り検査を行い、補強が適切に行われていたか、工事の進め方に問題がなかったかなどを調べているといいます。
博多地下鉄七隈線延伸工事の概要
七隈線は、天神南駅から橋本駅までをつなぐ長さ約12kmの福岡市営地下鉄。福岡空港駅から博多駅を経由してJR筑肥線に乗り入れる市営地下鉄空港線の南側を走る。ただし、七隈線と空港線が接続した駅はなく、1枚の乗車券で乗り継ぐ場合は、最も近い天神南駅と天神駅の改札間を約550m移動しなければならない。
そこで、福岡市は七隈線の利便性を高めるために延伸を計画。11年度から事業化に向けて取り組み、12年6月11日に国土交通大臣から延伸区間の鉄道事業の許可を得た。
工事に向けては、13年4月11日に国土交通省からトンネルなど土木構造物等の「工事施行認可」を取得。14年1月24日には、トンネルなどを構築した後に必要となる電気施設等の「工事施行認可」を取得した。
出典:http://kenplatz.nikkeibp.co.jp/
延伸区間の土木工事は3つの工区に分けて発注され、最も東側の博多駅の構築を含む区間の工事「博多駅区」の部分が、今回の現場。
出典:http://kenplatz.nikkeibp.co.jp/
地下鉄七隈線の延伸工事のうち、「博多駅工区」は、NATM(ナトム)、開削、アンダーピニングという異工種が混在する難工事とされていました。
NATM(ナトム)工法とは?
陥没した現場は、博多駅から西におよそ300メートルの博多駅前二丁目の交差点付近で、当時は、地下20メートルの岩盤にすでに掘られていたトンネルの、上部の幅を広げる拡幅工事が行われていました。工事は、「NATM工法」と呼ばれる方法で、半円形に機械で掘り進め、特殊なボルトを打ち込んだり「H型鋼」という鋼材を当てたりしたうえで、内部の表面にコンクリートを吹きつけ、壁を強化していきます。
NATM工法は、もともと山岳部のトンネル工事で使われていましたが、汎用性が高く、ほかの補助工法と合わせることで複雑な地層の都市部の地下のトンネル工事でも広く活用されています。
現場では、すでにこの工法で高さおよそ4.5メートル、直径およそ9メートルの半円形のトンネルが掘られていて今回は、トンネルの上部をさらに最大で3メートル余り広げる拡幅工事が行われていました。
作業では、トンネルの上の地層にある地下水を含んだ砂や、れきの層に到達しないよう、現場付近でボーリング調査を行って地層の状況を確認したうえで、砂やれきの層まで2メートルの余裕がある形で掘り進むよう設計していたということです。
出典:http://www3.nhk.or.jp/ナトム工法とは、ロックボルトと吹きつけコンクリートを主たる支保部材として、地山のゆるみを極力押さえ、地山が本来盛っている支保能力を、積極的に活用しながらトンネルと掘り進める。
地質変化に伴う対応性にも優れており、トンネル計測工により地山の返上を常時把握しながら採掘するため、安全性が高い。
出典:http://yashimadatn.sakura.ne.jp/summary/
NATM工法は、安全性が高いトンネル掘削方法なんですね。
「TN-Monitor」とは?
大成建設が開発したトンネル先行変位計測システム。
都市部のトンネル工事において山岳トンネル工法(NATM)を用いて施工する際、切羽前方の微細な地盤変形をトンネル坑内から詳細に計測できるものだといいます。
今回の福岡市地下鉄の七隈線博多駅工事で初めて適用されました。
同システム(左図は構造概要)は、トンネル坑内から切羽前方の約20㍍前方に、地盤の上下方向の変形量から沈下分布状況を計測する「SAA」(地盤の微細な変状を精度よく測定できる加速度センサーを搭載した傾斜計を数珠つなぎにして3次元の変位を計測する地中変位計)、トンネル前方からトンネル内に押し出してくる地盤の動きを捉える「T-REX」(リング状の磁性体の位置変化を受信素子で計測してトンネル切羽先行部の奥行方向変位分布を評価する地中(押出し量)変位計で、磁性体間の変位増分を計測する装置)の2種類の計測機器を設置するもの。これらの計測機器から取得したデータにより、トンネルを掘進する際の前方の地盤の様子を詳細に把握することができる。
出典:https://www.kozobutsu-hozen-journal.net
博多駅前陥没の原因!地下鉄七隈線の延伸工事業者はどこ?復旧はいつ?